バーチャル百韻「水無瀬乱吟」 [バーチャル連句]
バーチャル百韻「水無瀬乱吟」
平成十八年 八月二十八日
平成十八年十一月二十八日
(表)
発句 雪ながら水無瀬の山は霞みけり 兎 春
脇 村里遠く匂ふ梅が香 蘭 春
第三 四阿の蔓薔薇越しに春みえて 奴 春
四 船さす音もほそきあけぼの 光 雑
五 月やなほ田中の径を照らすらん 修 秋月
六 霜置く石原秋は暮れけり 白 秋
七 鳴く虫の願い激しく草枯れて 智 秋
八 垣根のぞけばあらはなるかほ 朱 雑
(初裏)
九 堀深き宮や嵐におくるらん 狸 雑
十 隠有り東家狭窓に憂ふ 侘 雑
十一 いまさらに一人もなしと思うなよ 奴 雑
十二 気移りにわか微微も知らずや 倭 雑
十三 待ちわぶる花こそつゆの命なれ 蘭 春花
十四 ゆらゆら野辺にうち霞む影 兎 春
十五 春暮れぬ一声あげて北帰行 光 春
十六 深山を行けばわく秘湯あり 奴 雑
十七 古むつき時雨の宿に隠し干し 智 秋
十八 青春の夢月もやつれて 修 秋月
十九 喘鳴の音聞き明かす夜秋の暮れ 侘 秋
二十 さうなで念ず荻の上風 狸 秋
二十一 逢えしみな故郷薫す和しあり 倭 雑
二十二 老いの行方を誰に尋ねん 光 雑
(二表)
二十三 埒もなき繰言燻べあわれ知れ 奴 雑
二十四 それも人生夕暮の空 修 雑
二十五 けふもまた花盗びとの番をして 蘭 春花
二十六 もう行っちゃうの春のかりがね 智 春
二十七 おぼろなる月仲なれど去らんでと 侘 春月
二十八 やしろのあきの悠ししののめ 狸 秋
二十 九霧立ちし末野の里に汀女来る 兔 秋
三十 風威砧音 槇葉鳴鳴 倭 秋
三十一 さゆる日も頭は冴えず年毎に 奴 秋
三十二 頼むは眼ゴミ拾う山 光 雑
三十三 さりとても此の道のほかみちはなし 蘭 雑
三十四 晋三ぼうやいづちゆかまし 修 雑
三十五 きぬぎぬになりし愛娘逢い願ふ 侘 雑
三十六 私の気持ちどうにもならない 智 雑
(二裏)
三十七 あかず夜に古地の君へ気馳せらん 倭 雑
三十八 朝起きて知る死者の面影 兔 雑
三十九 草生ふる大霊界の浦廻にて 狸 雑
四十 名もなき宿も御守りを売れ 奴 雑
四十一 たらちねの眉の白きもあはれなり 光 雑
四十二 越後の山河夢に見るらむ 蘭 雑
四十三 此の世では他力の教かぎりにて 修 雑
四十四 輪廻止む法釈迦に聞かばや 侘 雑
四十五 寝て覚めて露の数ほど逢いたくて 智 秋
四十六 頼めど誰も過ぐる秋風 倭 秋
四十七 目つむりてひとまつ虫を聴きてをり 兔 秋
四十八 捜索のやま月のみぞすむ 狸 秋月
四十九 核に我たゞあらましのニュース見て 奴 雑
五十 北に早や降る夜な夜なの霜 光 冬
(三表)
五十一 あし枯れていろなき浦に孤鶴立つ 蘭 冬
五十二 摂理のままに遊ぶふな人 修 雑
五十三 ゆくえなき煙霞の国は罪はてる 侘 春
五十四 先行き見えぬ半島の春 智 春
五十五 山壁の青葉圧しして花おちて 倭 春花
五十六 露けし山路しばし歩を止め 兎 秋
五十七 筑波何ど時雨ぬるとも帰るらん 狸 秋
五十八 錆びた車に月はなれけり 奴 秋月
五十九 心あり在りし日語るホームレス 光 雑
六十 藻屑ひろへば舟いづるみゆ 蘭 雑
六十一 朝なぎの空にきらめく米軍機 修 雑
六十二 日本海へと雪さやぬけゆく 侘 冬
六十三 遠嶺の裸木の影いとしくて 智 冬
六十四 番飛び立ち流る蘆風 倭 雑
(三裏)
六十五 いくたびか朝の別れをかさねまし 修 雑
六十六 問へど答えぬ月ぞかなしき 朱 秋月
六十七 露と霜メール邪魔する秋の朝 光 秋
六十八 留守家のすゝき枯れまくもをし 奴 秋
六十九 うづら鳴くかたやきそばを喰ひし日に 狸 秋
七十 神田の里で古書を商ふ 兎 雑
七十一 ジャズ喫茶待ちて想ひはSOFTJAZZ 倭 雑
七十二 拗ねて見せるもほんの一瞬 智 雑
七十三 君仕草また生憎の恋惑ひ 侘 雑
七十四 このやるせなさ世さへ恨めし 修 雑
七十五 デルスーの高貴なこころしらざらん 蘭 雑
七十六 草葉踏みわけ訪う人もなし 光 夏
七十七 返す田や備後の国の出目金氏 白 春
七十八 山は霞まぬジムのくれがた 狸 春
(名残表)
七十九 鴬の去りて一夜のあくびかな 光 春
八十 華の小夜子はしぐさ静香似 蘭 春
八十一 夜桜に顔をそむけて動かざる 紫 春花
八十二 空の手枕夢覚めうるむ 侘 雑
八十三 燃えさかる思いも日々に灰となり 智 雑
八十四 機、極まりて山へ移りゆ 倭 雑
八十五 身を隠すいとまもなしに警吏来る 兎 雑
八十六 籠の仕掛けにかかる熊の子 狸 雑
八十七 松坂をただ東西の走狗にて 奴 雑
八十八 吉良邸うらは敵か味方か 蘭 雑
八十九 我が庵は何事もなく秋の夜 修 秋
九十 有明月に雁わたりゆく 智 秋月
九十一空沁む露 紅紫や映えし寺の萩 倭 秋
九十二 流れる雲に心なる人 光 雑
(名残裏)
九十三 夢うつつ限りの灯燃え消えぬ 侘 雑
九十四 耳を澄ませば永久のシャンソン 兎 雑
九十五 仏性は皆備はるも出で難し 蘭 雑
九十六 曇りガラスに春風ぞふく 奴 春
九十七 草枕いく霜過ぎて朝霞 光 春
九十八 おぼろに見ゆる美しい国 修 春
九十九 うつし世におのれのみはと身を正し 智
百 柳が本にSHINがはじける 狸
(余興)
百一 おもしろき格技のごときタッグマッチ水無瀬乱吟終了の笛 兎
百二 月下花 華やに闇降つ世の移り静動辿るば彩なす百韻 倭
(留め書き)
連歌・俳諧も「交響」(響き合い)ということが基本で、
名ガイド(「風雅堂」)の解説にあった「二度ネタ厳禁」ということを再確認した。
兎
(参考)
水無瀬三吟何人百韻
長享二年正月二十二日
雪ながら山もと霞む夕べかな 宗祇
行く水遠く梅匂う里 肖柏
川風にひとむら柳春みえて 宗長
船さす音もしるき明け方 祇
月やなほ霧渡る夜に残るらん 柏
霜置く野原秋は暮れけり 長
鳴く虫の心ともなく草枯れて 祇
垣根をとへばあらはなる道 柏
〔初裏〕
山深き里や嵐におくるらん 長
慣れぬ住まひぞ寂しさも憂き 祇
いまさらに一人ある身を思うなよ 柏
移ろはむとはかねて知らずや 長
置きわぶる露こそ花にあはれなれ 祇
まだ残る日のうち霞むかげ 柏
暮れぬとや鳴きつつ鳥の帰るらん 長
深山を行けばわく空もなし 祇
晴るる間も袖は時雨の旅衣 柏
わが草枕月ややつさむ 長
いたずらに明かす夜多く秋ふけて 祇
夢に恨むる荻の上風 柏
見しはみな故郷人の跡もなし 長
老いの行方よ何にかからむ 祇
〔二表〕
色もなき言の葉にだにあはれ知れ 柏
それも友なる夕暮の空 祇
雲にけふ花ちりはつる嶺越えて 長
きけば今はの春のかりがね 柏
おぼろげの月かは人も待てしばし 祇
かりねの露の秋の明けぼの 長
末野なる里ははるかに霧立ちて 柏
吹きくる風はころもうつ聲 祇
さゆる日も身は袖うすき暮毎に 長
たのむもはかなつま木とる山 柏
さりともの此の世の道はつきはてて 祇
心ぼそしやいづちゆかまし 長
命のみ待つことにするきぬぎぬに 柏
なほ何なれや人の戀しき 祇
〔二裏〕
君を置きてあかずも誰をおもふらん 長
そのおもかげににたるだになし 柏
草木さへふるき都の恨みにて 祇
身のうき宿も名殘りこそあれ 長
たらちねのとほからぬ跡になぐさめよ 柏
月日の末や夢にめぐらむ 祇
此の岸をもろこし舟のかぎりにて 長
又生まれこぬ法をきかばや 柏
あふまでとおもひの露の消え歸り 祇
身を秋風も人だのめなり 長
松むしのなく音かひなきよもぎふに 柏
しめゆふ山は月のみぞすむ 祇
鐘に我たゞあらましのね覚めして 長
いたゞきけりな夜な夜なの霜 柏
〔三表〕
冬がれのあしたづわびてたてる江に 祇
夕しほ風のとほつ舟人 柏
行方なき霞やいづくはてならん 長
くるかた見えぬ山ざとのはる 祇
茂みよりたえだえ殘る花おちて 柏
木の本わくるみちの露けさ 長
秋はなどもらぬ岩やも時雨るらん 祇
こけの袂も月はなれけり 柏
心あるかぎりぞしるきよすて人 長
をさまる波に舟いづる見ゆ 祇
朝なぎの空に跡なき夜の雲 柏
雪にさやけき四方のとほ山 長
嶺の庵木の葉ののちも住みあかで 祇
さびしさならふ松風の聲 柏
〔三裏〕
か此のあかつきおきをかさねまし 長
月はしるやの旅ぞかなしき 祇
露ふかみ霜さへしをる秋の袖 柏
うす花すゝきちらまくもをし 長
うづらなくかた山暮れてさむき日に 祇
野となる里もわびつゝぞすむ 柏
かへりこば待ちしおもひを人やみん 長
うときもたれかこゝろなるべき 祇
むかしよりたゞあやにくの戀の道 柏
わすられがたき世さへうらめし 長
山がつになど春秋のしらるらん 祇
植ゑぬ草葉のしげき柴の戸 柏
かたはらにかきほのあら田返しすて 長
行く人かすむ雨のくれがた 祇
〔名残表〕
やどりせん野を鶯やいとふらん 長
小夜もしづかにさくらさくかげ 柏
灯をそむくる花に明けそめて 祇
たが手枕にゆめはみえけん 長
契りはやおもひたえつつ年もへぬ 柏
いまはのよはひ山もたづねじ 祇
かくす身を人はなきにもなしつらん 長
さても憂き世にかかる玉のを 柏
松の葉をただ朝ゆふのけぶりにて 祇
浦わの里はいかにすむらん 長
秋風のあら磯まくら臥しわびぬ 柏
雁なく山の月ふくる空 祇
小萩原うつろふ露もあすやみむ 長
あだのおほ野を心なる人 柏
〔名残裏〕
忘るなよ限りやかはる夢うつつ 祇
おもへばいつを古にせむ 長
仏たちかくれては又いづる世に 柏
枯れし林も春風ぞふく 祇
山はけさいく霜夜にかかすむらん 長
けぶりのどかに見ゆるかり庵 柏
いやしきも身ををさむるは有つべし 祇
人をおしなべ道ぞただしき 長
平成十八年 八月二十八日
平成十八年十一月二十八日
(表)
発句 雪ながら水無瀬の山は霞みけり 兎 春
脇 村里遠く匂ふ梅が香 蘭 春
第三 四阿の蔓薔薇越しに春みえて 奴 春
四 船さす音もほそきあけぼの 光 雑
五 月やなほ田中の径を照らすらん 修 秋月
六 霜置く石原秋は暮れけり 白 秋
七 鳴く虫の願い激しく草枯れて 智 秋
八 垣根のぞけばあらはなるかほ 朱 雑
(初裏)
九 堀深き宮や嵐におくるらん 狸 雑
十 隠有り東家狭窓に憂ふ 侘 雑
十一 いまさらに一人もなしと思うなよ 奴 雑
十二 気移りにわか微微も知らずや 倭 雑
十三 待ちわぶる花こそつゆの命なれ 蘭 春花
十四 ゆらゆら野辺にうち霞む影 兎 春
十五 春暮れぬ一声あげて北帰行 光 春
十六 深山を行けばわく秘湯あり 奴 雑
十七 古むつき時雨の宿に隠し干し 智 秋
十八 青春の夢月もやつれて 修 秋月
十九 喘鳴の音聞き明かす夜秋の暮れ 侘 秋
二十 さうなで念ず荻の上風 狸 秋
二十一 逢えしみな故郷薫す和しあり 倭 雑
二十二 老いの行方を誰に尋ねん 光 雑
(二表)
二十三 埒もなき繰言燻べあわれ知れ 奴 雑
二十四 それも人生夕暮の空 修 雑
二十五 けふもまた花盗びとの番をして 蘭 春花
二十六 もう行っちゃうの春のかりがね 智 春
二十七 おぼろなる月仲なれど去らんでと 侘 春月
二十八 やしろのあきの悠ししののめ 狸 秋
二十 九霧立ちし末野の里に汀女来る 兔 秋
三十 風威砧音 槇葉鳴鳴 倭 秋
三十一 さゆる日も頭は冴えず年毎に 奴 秋
三十二 頼むは眼ゴミ拾う山 光 雑
三十三 さりとても此の道のほかみちはなし 蘭 雑
三十四 晋三ぼうやいづちゆかまし 修 雑
三十五 きぬぎぬになりし愛娘逢い願ふ 侘 雑
三十六 私の気持ちどうにもならない 智 雑
(二裏)
三十七 あかず夜に古地の君へ気馳せらん 倭 雑
三十八 朝起きて知る死者の面影 兔 雑
三十九 草生ふる大霊界の浦廻にて 狸 雑
四十 名もなき宿も御守りを売れ 奴 雑
四十一 たらちねの眉の白きもあはれなり 光 雑
四十二 越後の山河夢に見るらむ 蘭 雑
四十三 此の世では他力の教かぎりにて 修 雑
四十四 輪廻止む法釈迦に聞かばや 侘 雑
四十五 寝て覚めて露の数ほど逢いたくて 智 秋
四十六 頼めど誰も過ぐる秋風 倭 秋
四十七 目つむりてひとまつ虫を聴きてをり 兔 秋
四十八 捜索のやま月のみぞすむ 狸 秋月
四十九 核に我たゞあらましのニュース見て 奴 雑
五十 北に早や降る夜な夜なの霜 光 冬
(三表)
五十一 あし枯れていろなき浦に孤鶴立つ 蘭 冬
五十二 摂理のままに遊ぶふな人 修 雑
五十三 ゆくえなき煙霞の国は罪はてる 侘 春
五十四 先行き見えぬ半島の春 智 春
五十五 山壁の青葉圧しして花おちて 倭 春花
五十六 露けし山路しばし歩を止め 兎 秋
五十七 筑波何ど時雨ぬるとも帰るらん 狸 秋
五十八 錆びた車に月はなれけり 奴 秋月
五十九 心あり在りし日語るホームレス 光 雑
六十 藻屑ひろへば舟いづるみゆ 蘭 雑
六十一 朝なぎの空にきらめく米軍機 修 雑
六十二 日本海へと雪さやぬけゆく 侘 冬
六十三 遠嶺の裸木の影いとしくて 智 冬
六十四 番飛び立ち流る蘆風 倭 雑
(三裏)
六十五 いくたびか朝の別れをかさねまし 修 雑
六十六 問へど答えぬ月ぞかなしき 朱 秋月
六十七 露と霜メール邪魔する秋の朝 光 秋
六十八 留守家のすゝき枯れまくもをし 奴 秋
六十九 うづら鳴くかたやきそばを喰ひし日に 狸 秋
七十 神田の里で古書を商ふ 兎 雑
七十一 ジャズ喫茶待ちて想ひはSOFTJAZZ 倭 雑
七十二 拗ねて見せるもほんの一瞬 智 雑
七十三 君仕草また生憎の恋惑ひ 侘 雑
七十四 このやるせなさ世さへ恨めし 修 雑
七十五 デルスーの高貴なこころしらざらん 蘭 雑
七十六 草葉踏みわけ訪う人もなし 光 夏
七十七 返す田や備後の国の出目金氏 白 春
七十八 山は霞まぬジムのくれがた 狸 春
(名残表)
七十九 鴬の去りて一夜のあくびかな 光 春
八十 華の小夜子はしぐさ静香似 蘭 春
八十一 夜桜に顔をそむけて動かざる 紫 春花
八十二 空の手枕夢覚めうるむ 侘 雑
八十三 燃えさかる思いも日々に灰となり 智 雑
八十四 機、極まりて山へ移りゆ 倭 雑
八十五 身を隠すいとまもなしに警吏来る 兎 雑
八十六 籠の仕掛けにかかる熊の子 狸 雑
八十七 松坂をただ東西の走狗にて 奴 雑
八十八 吉良邸うらは敵か味方か 蘭 雑
八十九 我が庵は何事もなく秋の夜 修 秋
九十 有明月に雁わたりゆく 智 秋月
九十一空沁む露 紅紫や映えし寺の萩 倭 秋
九十二 流れる雲に心なる人 光 雑
(名残裏)
九十三 夢うつつ限りの灯燃え消えぬ 侘 雑
九十四 耳を澄ませば永久のシャンソン 兎 雑
九十五 仏性は皆備はるも出で難し 蘭 雑
九十六 曇りガラスに春風ぞふく 奴 春
九十七 草枕いく霜過ぎて朝霞 光 春
九十八 おぼろに見ゆる美しい国 修 春
九十九 うつし世におのれのみはと身を正し 智
百 柳が本にSHINがはじける 狸
(余興)
百一 おもしろき格技のごときタッグマッチ水無瀬乱吟終了の笛 兎
百二 月下花 華やに闇降つ世の移り静動辿るば彩なす百韻 倭
(留め書き)
連歌・俳諧も「交響」(響き合い)ということが基本で、
名ガイド(「風雅堂」)の解説にあった「二度ネタ厳禁」ということを再確認した。
兎
(参考)
水無瀬三吟何人百韻
長享二年正月二十二日
雪ながら山もと霞む夕べかな 宗祇
行く水遠く梅匂う里 肖柏
川風にひとむら柳春みえて 宗長
船さす音もしるき明け方 祇
月やなほ霧渡る夜に残るらん 柏
霜置く野原秋は暮れけり 長
鳴く虫の心ともなく草枯れて 祇
垣根をとへばあらはなる道 柏
〔初裏〕
山深き里や嵐におくるらん 長
慣れぬ住まひぞ寂しさも憂き 祇
いまさらに一人ある身を思うなよ 柏
移ろはむとはかねて知らずや 長
置きわぶる露こそ花にあはれなれ 祇
まだ残る日のうち霞むかげ 柏
暮れぬとや鳴きつつ鳥の帰るらん 長
深山を行けばわく空もなし 祇
晴るる間も袖は時雨の旅衣 柏
わが草枕月ややつさむ 長
いたずらに明かす夜多く秋ふけて 祇
夢に恨むる荻の上風 柏
見しはみな故郷人の跡もなし 長
老いの行方よ何にかからむ 祇
〔二表〕
色もなき言の葉にだにあはれ知れ 柏
それも友なる夕暮の空 祇
雲にけふ花ちりはつる嶺越えて 長
きけば今はの春のかりがね 柏
おぼろげの月かは人も待てしばし 祇
かりねの露の秋の明けぼの 長
末野なる里ははるかに霧立ちて 柏
吹きくる風はころもうつ聲 祇
さゆる日も身は袖うすき暮毎に 長
たのむもはかなつま木とる山 柏
さりともの此の世の道はつきはてて 祇
心ぼそしやいづちゆかまし 長
命のみ待つことにするきぬぎぬに 柏
なほ何なれや人の戀しき 祇
〔二裏〕
君を置きてあかずも誰をおもふらん 長
そのおもかげににたるだになし 柏
草木さへふるき都の恨みにて 祇
身のうき宿も名殘りこそあれ 長
たらちねのとほからぬ跡になぐさめよ 柏
月日の末や夢にめぐらむ 祇
此の岸をもろこし舟のかぎりにて 長
又生まれこぬ法をきかばや 柏
あふまでとおもひの露の消え歸り 祇
身を秋風も人だのめなり 長
松むしのなく音かひなきよもぎふに 柏
しめゆふ山は月のみぞすむ 祇
鐘に我たゞあらましのね覚めして 長
いたゞきけりな夜な夜なの霜 柏
〔三表〕
冬がれのあしたづわびてたてる江に 祇
夕しほ風のとほつ舟人 柏
行方なき霞やいづくはてならん 長
くるかた見えぬ山ざとのはる 祇
茂みよりたえだえ殘る花おちて 柏
木の本わくるみちの露けさ 長
秋はなどもらぬ岩やも時雨るらん 祇
こけの袂も月はなれけり 柏
心あるかぎりぞしるきよすて人 長
をさまる波に舟いづる見ゆ 祇
朝なぎの空に跡なき夜の雲 柏
雪にさやけき四方のとほ山 長
嶺の庵木の葉ののちも住みあかで 祇
さびしさならふ松風の聲 柏
〔三裏〕
か此のあかつきおきをかさねまし 長
月はしるやの旅ぞかなしき 祇
露ふかみ霜さへしをる秋の袖 柏
うす花すゝきちらまくもをし 長
うづらなくかた山暮れてさむき日に 祇
野となる里もわびつゝぞすむ 柏
かへりこば待ちしおもひを人やみん 長
うときもたれかこゝろなるべき 祇
むかしよりたゞあやにくの戀の道 柏
わすられがたき世さへうらめし 長
山がつになど春秋のしらるらん 祇
植ゑぬ草葉のしげき柴の戸 柏
かたはらにかきほのあら田返しすて 長
行く人かすむ雨のくれがた 祇
〔名残表〕
やどりせん野を鶯やいとふらん 長
小夜もしづかにさくらさくかげ 柏
灯をそむくる花に明けそめて 祇
たが手枕にゆめはみえけん 長
契りはやおもひたえつつ年もへぬ 柏
いまはのよはひ山もたづねじ 祇
かくす身を人はなきにもなしつらん 長
さても憂き世にかかる玉のを 柏
松の葉をただ朝ゆふのけぶりにて 祇
浦わの里はいかにすむらん 長
秋風のあら磯まくら臥しわびぬ 柏
雁なく山の月ふくる空 祇
小萩原うつろふ露もあすやみむ 長
あだのおほ野を心なる人 柏
〔名残裏〕
忘るなよ限りやかはる夢うつつ 祇
おもへばいつを古にせむ 長
仏たちかくれては又いづる世に 柏
枯れし林も春風ぞふく 祇
山はけさいく霜夜にかかすむらん 長
けぶりのどかに見ゆるかり庵 柏
いやしきも身ををさむるは有つべし 祇
人をおしなべ道ぞただしき 長
2008-03-05 17:36
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